# 310

» 朝に大盛りぺヤングカップやきそばを作って食べようとしたらお湯捨てに失敗。流しに麺を半分ほどぶちまけました。それで僕はこうみえても科学重視の実利主義者なので、手ですくって元に戻し何事もなかったかのようにソースを降って食べました。そうしたら麺と一緒に口のなかに髪の毛がごっそりと入ってしまいました。多分流しの底に溜っていたのを、麺が絡めとってしまったのだと思います。髪の毛の味はなかなか気持ちが悪かったです。そういうわけで、僕はもう大盛りぺヤングを二度と買いませんし普通サイズもたぶん買わないのだろうと思います。今日は天気がとてもいいです。

» それにしても、何故流しに髪の毛がたまっていたのかということです。僕は台所では頭は洗いません。顔を洗ったり髭を剃ったりするのでさえ洗面所やお風呂場を使っています。ですから、ここに髪の毛がたまっているのはほとんど有り得ない現象です。そうすると考えられるのは a) これは他人の髪の毛である b) これは動物の毛である c) これは髪の毛のように見えるが実は別の場所のものである d) 髪の毛は存在しない。僕は嘘をついている。のどれかです。

» しかし、こう書いてみてわかるのですが(いや、むしろ今から書く結論のために僕はキーボードを叩いているのです。問題なぞある意味どうでもいいです)、僕は髪の毛に最近オブセッションを感じているということです。僕はこのところ自分の家ではほとんど寝ているだけです。それにもかかわらず、床はどんどん髪の毛が散らばっていきます。床を手でこすれば髪の毛が手にごっそりと溜まります。僕は毎週一回吸い取り式の掃除機をかけて部屋を綺麗にします。しかし、それでも僕が床に目をやるたび、そこには網の目のように細かい髪の毛が落ちているのです。とくにベッドのまわりは。僕はもうほとんど神経症です。

» おそらくは僕の見ていないところ、つまりベッドの下とか、掃除機の口の届かない隙間とかには想像もつかないような髪の毛の王国が育っているのだと思います。そこでは豊かな下草のような毛が繁り、複雑な生態系が進化しているかもしれません。毛を食べながら成長する線虫、丸めて巣にするトカゲの仲間、毛を身にまとい身体を防御するカニの幼生……。

» そういうものを考えていると台所の流しにすこしくらい毛が溜まったからといってどうということはないのかもしれません。僕は戦場に生きているのですから。

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