# 244

» 初めてバイクに乗ることになりまして、今休憩しているわけですが、これが非常に怖ろしいということがよく分りました。なにか僕はスピードに対して根源的な恐怖があるのかもしれません。このことは車に乗っていてもそうなのですが、時速が 30 Km/h を超えると、僕はあまりの恐ろしさに縮み上がってしまうのです。後方に車が見えると背中に汗がどっと噴き出ます。目の前を横断しようとする車や歩行者を見ると反射的に急ブレーキをかけたくなります。クラクションを鳴らされればもう何も考えることができなくなってしまいます。僕は絶えず訪れる恐怖におびえながら、アクセルを無理やり入れ、ブレーキをなんとか緩めることができるのです。ハンドルをにじむ汗でじっとりと濡らしながら。また、停車時でさえも安息はやってきません。自分の止めている場所が間違っているのではないか、次に前の車が発進したときにちゃんと着いていくことができるか、次の道でどう曲がれば、あるいは直進すればいいのか、そもそも僕は運転をしていて大丈夫なのか、携帯している免許は偽物で僕は騙されているのではないか、などとどうしようもない思念がとめどなく渦巻き、僕を捕らえて離さないのです。悪いことに、これは実際の運転に影響を及ぼします。僕は何度も発進にもたつき、一度死にかけ、そして一度駐車するところを間違えたのです。

» ですが、こうやって何度も死ぬような思いをすることで、僕のなかにある速度に対する恐怖をゴムのように麻痺させることができるのでしょう。あるいは、恐怖を麻痺させるのではなく、感じるところはそのままで、それでも恐怖を乗り越えて適切にアクセルを入れ、ハンドルを取り、ブレーキを掛けるようになれるのではないでしょうか。他人がどのように自分の恐怖と折り合いをつけているかは分りませんし、聞いたところであまり助けにもならないのですけれど、それでもそれが不可能なことではないように思えます。僕はやらねばなりません。

» この問題のもっとも大きなポイントは僕はバイクや車に初めて乗ったとかどうとかいうほど、若くないということです。

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