# 127

>> [book] クリストファー・プリースト「奇術師」

読みました。面白いのは面白いのですが、中国人のエピソードのおかげで僕にはボーデンのネタがあまりに簡単に分かってしまいました。それでいて R・エンジャの方はボーデンに比べて確かにネタは巧妙に隠されていて、分かったときは驚きましたが、奇術としては格が下がるというか、たしかに凄いですが、それは結局のところ SF パワーの凄さであって、奇術自体が凄いわけではないので残念な感じでした。SF を読んでいるのに SF であることが残念とは不思議なことです。もっとも、彼の最後の記述である、生への執着、生きることへの意欲の描写には元気付けられました。あの行為は生きるために自殺をするようなものですけれど。

ただ、この本の重要なパートである奇術師による手記は、その中で書かれている通り、人を騙すのが職業の人間の手によるものです。僕の解釈が間違っている可能性、仕組まれた罠に陥っている可能性が常にあります。そういうモヤモヤを残す作品でした。神父の二重存在は結局なんだったのでしょう。

>> [book] 小林泰三「αΩ」

読みました。これは面白いです。この場合の面白いというのは笑えるということです。ウルトラマンがモチーフになっていることは誰でも分かるので言わないとして、執拗にでてくるグロテスクな描写と冷静な科学解説にお腹がひきつります。ただ、この描写自体が目的になってしまっていて、ホラーとしての怖さや、お話としての面白さが失われているところもあります。読んでいて背筋がゾッとするようなタイプのホラーではなく、ゾンビ映画系のバカホラーであるというのは分かるのですが、描写を楽しんでいる筆者が透けて見えてしまうのはいいことではありません。とくに残念なのは、ヒロインとして出てくる女子高生の出番が意外とあっさり終わってしまうことです。僕の中のサディストな部分がこれはもったいないことだと言っています。冒頭だけでほとんど出てこない妻ではなく、こちらを主人公の守りたいものにしたほうが良かったのではないでしょうか。結末もあまり盛り上がらずあっさり終わります。もったいないです。

それから、この本はクリスチャンの方は読まないほうがいいです。もう一つモチーフになっているのが、キリスト教とその聖書への風刺だからです。いちおう最後にフォローらしいものはありますが、原理的なキリスト信奉者の人が読むと怒るに違いありません。僕はキリスト教徒ではありませんし宗教の本質は神様へ祈ることだと思っていますから、風刺として受け流すことができました。

もう一つ。一文ごとに改行する散文詩のような書き方は、「目を擦る女」でもありましたが原稿の埋め草にしか見えません。内容も薄いですし、どういう効果を狙っているのか全く意図が分かりません。はやく地の文が読みたくてさっと読むか、読み飛ばしてしまいます。ページがもったいないので止めて欲しいです。

>> [rights][music] 輸入盤CD規制に関するシンポジウム 発言書き起こし

素晴らしいです。僕も足を運ぼうと思っていましたが、結局旅行に行ってしまいました。現時点では全体の 60% までテキスト化されているようです。全てテキスト化されました。僕の環境はものすごいナローバンドなので、このようにテキストで提供されるととても助かります。

from テレビ見ようよ!(仮)- CD輸入権問題シンポジウム関連リンク

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