# 066

>> ``早朝、トイレに入った僕はひどく後悔し始めた。ラーメンだ。

長い隔離生活で僕のライフサイクルは深夜に高炭水化物の食事をとることが必須になっていた。それは隔離が終わっても、しばらく尾を引き、以前の生活ではめったに食べることのなかった即席めん製品を毎晩とらないと空腹を覚えるようになったのだ。

だが、今回食べた坦々麺は致命的だった。

舌ならばいくらでも馴らすことができる。舌にある味を感じる器官、味蕾(みらい)が特定の化学物質に応答するような他の味覚とは違って、辛味というものは単なる痛覚の反応だからだ。格闘家が打たれ強くなるように、舌も、何度も刺激を与えることで次の刺激に対してどんどん鈍感になっていく。傾斜効果。

問題は舌ではない。全然違うところにある。消化器系を一本のチューブとするなら問題の箇所はチューブのもう一方の端。出口。つまり肛門だ。

僕の肛門は坦々麺に対して経験が浅かった。適切な防御策を取れなかった。痛覚反応をもろに見せてしまった。これは、ゆゆしき事態だと思う。人類がこのことから学ぶべきことは大きい。

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>> スティーブン・バクスター「プランク・ゼロ」読み中。人間に全然共感できません。非人間、非生物のほうが生きる理由も単純で力強く、魅力的です。微妙。