# 048

>> おっ、The AGE 誌のサイトでグレッグ・イーガンのノンフィクションが掲載されています。公式サイトのトップに掲載してる亡命者の話のようですね。まだ全然読んでませんが(普通の人は読まなくてもいいと思います)。しかし、掲載された著者の名前が間違ってるのは可哀想です。Greg Evans って誰ですか。世界一の(SFの)作家なのにオーストラリア本国ではマイナーなのでしょうか。

>> [book] 神田三省堂書店 - SF フォーラム - 「万物理論」の謎を解く

the seats

(以下は自分の殴り書きのメモと、ほとんど消えかかった記憶によって再構成したトークショーの内容です。 なるべく思いだそうと努めましたが話者の発言の正しさは保証できません。脚注は自分が思ったことです)

始めに:

  • イーガン作品はあんまり売れていない。アメリカでは。イギリスが主。

山岸さんの翻訳業について:

  • レジュメでは食えない。→ワイルドカード(from 黒丸尚さん)
  • Interzone 誌にイーガンが多く掲載→買い取り式(日本では編集者が作家に持ち込む)だから良作品。
  • イーガンは最初はよくわかんないまま引き受けた(ホラー作家と思っていた)。
  • 「貸金庫」から「闇の中へ」の変わりように驚いた。

イーガン小説のパターン:

調べる人(探偵、ジャーナリスト)→嘘ネタとして、「こんな話もあるよ」→実は本当

話のすり替え:

  • アキリのキーボードの打ち方がモサラに似ている→アキリの説は正しい。
  • 大森「順列都市では詐欺師みたいな男が出てくるから構造がわかりやすい」

ホワイトボードに:

  • 宇宙消失: {{{サイコロ}   心}   宇宙}

万物理論では:

  • 大森「俺は女とつきあえない」→「俺は俺でいいんだ」→セカイ系。「山岸はこの言葉が嫌い」
  • 山岸「いや、自分を厳しく見つめないと(ダメだとイーガンは思っている)」「ライトノベルは願望充足小説か? 島に行くと 12 人の妹が………」
  • 大森「宇宙を救う」のではない。*1「恋愛関係はいらない、レンアイの病からの解放」
  • 山岸「それはイーガンとは違う」:
    • イーガン作品は悪役がワンパターン(イーガン自身がインタビューで認めている):
      • 「『自分の見たいものを見ている』→無知カルト」←このことによって社会や物事がねじ曲げられるのがイヤ
      • 「しあわせの理由」のあと書きに、坂村健は「イーガンは記述の小説」と書いている。*2

万物理論について:

最初のページから人間の本質がどんどん変わる

  • 生死
  • 寿命
  • DNA
  • ラマント野

Distress の訳語は「遭難」:

  • 救難信号:基石→世界全てを支える→遭難

幻想のルビに「ゆめ」:

  • 「他人を理解できる」という幻想を捨てる

大森:「人間の正しいあり方」を書いている。「でも、恋愛がないよね。カウンターパート(として書いてほしい)」*3「泣けるほうがいい」

大森:(なにかよくわからないことを言う)

山岸:(話を戻して、)イーガンの書きたいこと「天動説が信じられている世界で地動説のおそろしさを知らしめたい」(コペルニクス的転回)

来月の SFM 収録作:

Singleton←→宇宙消失
エヴァレット解釈 コペンハーゲン解釈
研究により多世界解釈は正しい  
今のぼくは幸せ→つまり、多世界のぼくは不幸せ→道徳的に悩む 

*4

大森:「でも、(万物理論は)ミステリ的には、犯人は僕だよね、結局お前かよ、みたいな」(これには参加者の多くが感心する)

(物理チェック担当の)志村さんによる解説:*5

  • 「他人を理解」とはそもそも:
    • この状況では
    • この○○において
    • ...
    • ↑こういうのを 100 件ほど、付帯条件としてつけて、なら言える。

物理方面に関しては、最初から SF なので気にならない。

  • 大統一理論が完成してる
  • しかもそれはなんか汚くて使えない、等々

宇宙消失よりもホラ話が始まるのが早い。

(次の長編)Diaspora について*6

  • 6 月から 9 月 30 日の間までには出したい。(ただし、早川の都合にもよる)
  • 河出書房新社の短編集「TAP」は年内いっぱいはでない。(全て初訳にするらしい)
  • イーガン作品は未訳が結構あると言われているが、そうでもない。46(原文) - 28(既訳) - 8(これから出る) とか。だから……*7
  • 他の本とネタがかぶらないかドキドキしてる。小林泰三のものともかぶってたし、テラネシア(仮)も SFM に載った日本人作家の話とニアミスしていた。万物理論はピンカー「人間の本性を考える」とかぶっている。

質疑応答:

(メモ忘れ)

参考文献

  • 無知カルトの主張については、ブライアン・アップルヤード「Understanding the Present」とほとんど同じ。
    • イギリスでは大臣も読んでいるらしい。山岸さんは黒い表紙の本を持参していた。
  • サイード「文化と帝国主義」。オースティンを帝国主義の文脈で読む。この作家の名前が出てくるのはそのせい。
    • 大森「オースティンをそういう風に読むのは大嫌い」*8

締め:

  • 山岸「イーガンは新作を全然ださないで論文の共著なんかしてる」
  • 大森「イーガンが翻訳を待っててくれてるんだよ」

*1 「SF が読みたい!」誌の「宇宙 SF なんて要らない」発言を指すのかな

*2 このとき大森さんはなにか言いたそう。ジーン・ウルフの対談でイーガンにナラティブがないと書いていたことだろうか。

*3 こういうことを言ってしまうこと自体、恋愛の病にかかっているように思う。

*4 ここまでの間、山岸さんは答える間にずっと上目づかいだったり、顔を手で覆う仕草をする。言葉を噛みしめて解釈しているのでしょうか。大森さんは他人が話している時に携帯をいじるのはやめて欲しいなあ

*5 喉の調子がよくなかったのでしょうか?よく聞き取れず

*6 ここで内容の紹介が続きましたが、今まさに読んでいる最中なので聴くわけにはいきません。脳でフィルタリングしました。

*7 ここで、山岸さんは顔を抑えてうめく。おそらく想像ですが、こう言いたいのだと思います。「ネットで叩かないで」と。

*8 何故だろう?「万物理論」はセカイ系として読むのに、ダブルスタンダードっぽく聞こえるなあ。

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